職務停止!?ココアって

2021年08月15日

戦争と美術品

『「盗まれた世界の名画」美術館』(サイモン・フープト著 内藤憲吾訳 創元社発行)
を読みました
約7分の1が『行方不明の美術品展示室』と題する図録になってる この本
基本的には 
 1990年に盗まれた フェルメール『合奏』
 2003年に盗まれた レオナルド・ダ・ヴィンチ『糸車の聖母』
 2004年に盗まれた ムンク『叫び』
などなど 美術品の盗難や捜査の実態や問題について語られたものです

しかし 美術品が盗難に遭う最大規模のイベントは戦争でしょう
  ・・・20世紀後半まで 美術やその他の文化遺産は 
     軍事衝突の勝利者の体に帰すのが当然の付加的な戦利品として
     広く認められていた。・・・

2003年のイラク戦争で アメリカのバグダット侵攻の後
イラク国立美術館から 市民や兵士らが盗んだ美術品は 約1万4000点
今も 約9000点が行方不明だそうです

第二次世界大戦では ドイツが 侵攻先の国で 「没収」と称し・・・
ドイツ敗戦後は アメリカやソ連が ドイツから 「賠償」と称し・・・

とはいえ 「返還」されたものも多数あり 
これが複雑な問題を新たに生んでいるのだとか

例えば オーストリアで ユダヤ人が所有していた美術品が ナチスの手に渡りました
戦後 オーストリア政府に「返還」され 美術館に置かれました
アメリカに亡命していた相続人は オーストリア政府を相手に訴訟を提起し
2006年 ようやく返還を受けたそうです

これは クリムトの黄金のアデーレのお話ですが 
同様のことは 個人対国家 国家対国家 個人対個人と 尽きることはありません

反対に チェコスロバキアで ナチスに「没収」された 美術品
その一部が大英博物館で発見され 相続人が返還を訴えたものの
イギリスの最高裁判所は 2005年 法的な返還義務はないと判断しました。
博物館も このケースにおいては 道義的に返還しようと考えていたようですが
最高裁判所は 特別な法律が必要だと付言したとのことです。


美術品は 動産
動産には 即時取得の制度があり
日本では 盗品の例外は 2年
( アメリカやカナダでは 盗品に即時取得は適用されず
  イギリスは6年 スイスは5年 フランスは3年
  イタリアでは 盗品の例外はないそうです )

わたしは 日本でこのような訴訟があった記憶がありません
ヨーロッパでも21世紀になってからなので 日本でもこれからかもしれません

戦争の傷跡は まだまだ残っていますね


judge_nori at 11:40│Comments(0)その他 

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